苅谷剛彦『知的複眼思考法』

 いわゆるハウツーものも読んでおかないとなあ、というか、要するにこういう類のものを拒否する理由は“徹頭徹尾自力で道を切り開いていきたい”ということに収斂されると思われるが、まあ普通のひとはそんなことはできないので僕も他者の助けを借りる次第なのであります。(エラソーな……)
知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ (講談社+α文庫)
 ちなみに五月末にこれを購入したのですが、表紙は2009.8.28現在出ている画像のような、人間の形をしたものの胸部から「ON」の文字が飛び出ているものではなく、白表紙に金の文字でタイトルが書かれているものになっております。
 著者は教育学をやっているだけあって説明がうまく、教育のための配慮が行き届いている。「複眼思考」という見慣れないワードを目印として用い、「常識」「ステレオタイプ」にとらわれて「思考停止」に陥らないものの考え方を説く(これらの言葉も繰り返し出てきます)。それが抽象的な議論に終始せず、一つ一つ具体的な例を持ち出してこれを分析してみせるのも正しいし、方法論も一つ一つの具体的に実行できるレベルまで分解し、順を踏んで展開されている。だからこの本に書かれているようなことを考えたことがない人でも理解でき、その思考法を自分のものとして使えると思われる。はっきり、具体的・体系的に、文章にして「思考法」を述べたことが出色だと思う。