『舗石の思想』秋山駿

舗石の思想 (講談社文芸文庫)
 もともとは『歩行と貝殻』が読みたかったんだけど文庫化されてなかったのでこれ。この本に書かれていることの主題は「私は並の人間になれない」ということの提示と、その解決へのあがきであるとして読んだ。……とだけ言うと語弊があって、「私」がいわゆるダメ人間であるということではなく、「ふつうの人間にとって自明なことが了解できない」*1という、人間(あるいは「生活者」)としての根本的な不安を述べているもの。僕自身この不安・疑問に覚えがあるので、おもしろく、溜飲が下がりつつ、読んでいました。ただ、この本(の作者:秋山駿)の問題の突き詰めようは僕のそれと比較すべくもなく――なにしろ本のほぼ全編においてこの問題を扱っているわけだから――、深く重いものだった。なかでも決定的に違うのは、わからないなりに自分の理論を打ち立ててそれを実践している点だと思う。やっぱり、自分がそういう人間だと判ったら、その方向で走るしかないのかもしれない。

*1:たとえば、「結婚とは何か? 何のために結婚するのか?」で、一般には好きな人ができたらその人と結婚したいと自然に思うようですけど、秋山駿は(おそらく)このことを不思議に思った