アイラブジュー

 I loves you.
 ……文法的には誤りがありますが、こう書くと、なにやら「僕は君が好きであるようだ」などと訳したくなる。この文の問題点はむろん本来「love」と書くところを「loves」としている、すなわち主語が一人称なのに動詞にいわゆる「3単現のs」をつけていることですが、こうして三人称が主語であるときにつける「s」を敢えて一人称主語に適用していることで、三人称の文から受けるような客観性が加味され、「He loves you.」「She loves you.」と同列にして「I loves you.」と捉えられることになる。つまり……前者ふたつの「彼/彼女は君のことを愛している。」というのは彼/彼女以外の何者かが彼/彼女のことについて「あいつ、お前のこと好きみたいだぜ」と告げている、これと同じ構造にして、発語者が発語者自身のことを客観的に見て「“僕”は君のことを愛している(ということが観測された)。」と述べていると感じられる。やや過剰に意訳すると、「ここしばらく、ずっと違和感を感じていた。君のことを見ると、きまって胸が高鳴って……、ヘンだと思うだろ。僕もヘンだと思ったさ。それで、長いこと考えてたんだ。いろんな関係ありそうな本も見た。でも、いつも決まって結論は、『これは恋だ』ということだった。さっぱり、わからないけれど、どうやら僕という人間は君のことを愛しているみたいなんだ。」みたいな、なんだろ、それが自然に生じた純粋な感情であることをアピールするとともに、「僕は君が好きだ」ということが主観的な思い込みでなくて、どうも動かしがたい事実なのだ、ということを言外に含めて、その思いの正当性(?)を補強する後ろ盾にしている感じがする。

補足:これ、ネイティヴな英語話者にも通じる感覚なのかな、と思っていたら、そういう名前の歌があるようだ。歌詞はここなど。読んでいくと遠まわしどころかカナリ直截的な内容なので、3単現のsではなくむしろ複数形として捉えたのかもしれない。「愛愛愛愛してるよお!!」みたいな感じに。