『二十世紀旗手』太宰治

 星新一が「空前絶後の傑作」とホメていたので。*1

二十世紀旗手 (新潮文庫)

二十世紀旗手 (新潮文庫)

 しかしね。ぜんぜんよくわかりませんでしたね。文章にまとまりがなく、筋立てらしい筋立てもなく、そもそも何が言いたいのかわからない、というのがしばしばある。「言いたいことがわからない」というのは前に読んだ『ヴィヨンの妻』も首をかしげるような話が多かったけど、これは話の内容よりも文のレベルで通じなくて、ほとんど太宰語という領域に入っている。ただ「キツいです」というのはよく伝わってくるけど。
 また小説の構成なんかを見ているとかなり実験的でちょっと面食らう。話中で作者が登場して語りはじめちゃったり、手紙の内容だけで小説にしたり。これに文章も含めて、この作品群の奔放さは、小説というより日記、それもテキストサイトなんてので行われた日記に近い感じがする。自意識過剰さカゲンもそうかな。

*1:『きまぐれエトセトラ』角川文庫のp.174