ふろあがり

 リハビリ気味に、ここ二箇月ぐらいで読んだ本(あんまし読めてないが……)で良かったものなど挙げとく。

 M.J.アドラー, C.V.ドーレン, (訳 外山滋比古、槇未知子)『本を読む本』
本を読む本 (講談社学術文庫)
 本の読み方、本を読むときの基本的な態度を説いた本。しっかり詳しく本を読み解くための「分析読書」なる方法の解説にページの大半が割かれているものの、ふつうに読み飛ばすべき本への態度に関しても書かれており、独自の読書観を持つでもない、それが醸成されるだけの読書経験を積んだでもない僕にとっては大いに有意義な手引きとなった。「分析読書」のほうはまだ実行する機会を得ていないが、ひとつ読書するうえでの指針をもっていることは実に役立つ。これからは手引きの本も積極的に読んでいきたいと思う。

 中谷宇吉郎『科学の方法』
科学の方法 (岩波新書 青版 313)
 前まえから目をつけていたが、ようやく読んだ。科学の解き明かす範囲の限界(というか、科学が世界について何かを解き明かしているわけではない)、科学の発展のあり方、科学に対する正しい付き合い方、といったものについて説かれている。或る意味でスキャンダラスな書物かもしれない。明晰なものの見方・記述、こういうのを啓蒙書と言うんでしょうね。

 伊藤比呂美伊藤比呂美詩集』
伊藤比呂美詩集 (現代詩文庫)
 おお、画像でてる。三月ごろから今年は詩を読もうと思っていて、四月ごろに読みはじめて、七月アタマごろに読み終えたのかな。それはどうでもいいが、(数年前に読んだ宮沢賢治の詩集を除いて)最初に選んだ詩集が伊藤比呂美、というのはどういうことかというと最初に印象強めのものを突っ込んでおいたほうがいいかなあという判断ですがそれもどうでもいいな。内容はひたすら個別的・感覚的、というか生理的、かな。正直これが作品たりえるのか? と考えだすとよくわからん、ウェブ日記と同じようなものなのではないか、という気もしてくるが、この言葉の力。引き寄せる力。

 おおひなたごう『カステラショックre-mix!!』
カステラショックre‐mix!! (Cue comics)
 今年は漫画(もう「マンガ」と表記してもいい、かな)も読もうと思っていて、まあ三月ごろに吾妻ひでおとり・みきの本を買って読みもしたのですが、それらに関して書くにはあまりに時期を逸している、ということで感想は省略します。ギャグマンガに興味があるんですよね。それは“色(≒意味)”がないことが大きいだろう。現実から遊離しているということ。自己完結性。現実に起こりうることを描写するストーリーものはあまり惹かれません(あまり読んだこともありませんが)。小説よりは一枚の絵を鑑賞する感じに近い。でも「この絵は何々を表していて……」などと語り始められると気が滅入ってしまうので、ただギャグを提示してくれるだけの本作は(そして、おおひなたごうの作品全般は……と期待する)好きだ。あと、どっかで見たよーな、いわゆる「上手い」絵ではないが(画力はあると思うが)、できる限り自己主張を抑えたような絵が好き。

 しりあがり寿『夜明ケ』
夜明ケ (Jets comics)
 これも読んだ。しりあがり寿は『エレキな春』のみ読了済み。短い話がたくさん入っている。ギャグになっているのか、いないのか……? と思ってしまうような話も多いが、どれも独特の感じが残る。著者学生時代の鬱屈した感じがよく出ているシリーズ「はたちマエ」が出色。あと、アトガキが好き。