『平凡』二葉亭四迷

 表題作のほか、「出産」「雑談」「余が言文一致の由来」「余が翻訳の基準」「私は懐疑派だ」「予が半生の懺悔」収録。
平凡―他六篇 (岩波文庫)
 とにかくこれで二葉亭四迷の小説(全三作)をすべて読んだことになるんだな。「浮雲」「其面影」「平凡」ときて、どれも似たような主人公で、似たような状況が現れるんだけど、最後のこの「平凡」が全体を通した感じとしては最も暗く、内省的だった。素直な心情描写がすっと胸に入ってきて、共感される。収録作の「予が半生の懺悔」というタイトルを見てもわかるとおり、至るところに二葉亭氏の悔恨の思いが顔を出していて、真面目な人だったんだろうなあと思わされた。作中では文学に対するある種の否定・嘲笑が(文学作品の中で!)なされていて、やっぱり真面目な人だったんだろうなあ。これと「其面影」は新聞社の人に頼まれて書いたのだそう。