『HEART STATION』宇多田ヒカル
これを早急に絶賛する必要性を(勝手に)感じたので、初めて腰を据えて聴いた。
- アーティスト: 宇多田ヒカル
- 出版社/メーカー: EMI Records Japan
- 発売日: 2008/03/19
- メディア: CD
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まず気付くのが、韻などといった音楽理論を思いきり無視した(見切った?)歌詞。「これはフンイキにもリズムにも合わないだろう……」というような表現が非常に多い。これは一曲目「Fight The Blues」に顕著で、たとえば、マジメな顔で(顔は想像だが)「鳴かぬなら鳴かせてみせようホトトギス」などと歌い上げられてしまうとこちらとしては何らかのアクションを取らざるを得ない、つまりビックリするというか、ほとんどズッコケてしまう域にある。上の歌詞、「ネタバレ」と言っても差し支えなく思われるほど、まあ、とにかくビックリ、ある種衝撃的な言葉遣いが目に付く。……が、それにもかかわらず、この妙にしっくりくる感じは何だ。マジメな顔で「鳴かぬなら〜」なんて歌われた日にゃ、もう、ズッコケるしか途はないに違いないのだが、これが全く自然で、必然性をもった流れに思われるのだ。それはおそらく、実際にこの歌詞が自然で、必然的なものなのだからだろう。言いたいことを包み隠さず誤魔化さずに言っているという感じがする。だから、ぼーっと聞き流していたのでは気付きにくいが、よくよく歌詞カードなど眺めながら聴いてみると、実に胸に刺さるような剥き出しの言葉が並んでいる。
……以上こういうようなことを思った。それにしても「テイク5」は怖い。曲全体を通してなんとも言い知れず怖い。ちょっとショックだった。次の「ぼくはくま」にまで不安感をひきずるくらい。そういえば「ぼくはくま」の「ライバルは海老フライだよ」という一節は素晴らしい。