記号の用法について

 まあつまり「イブン・ルシュド」と「イブン=ルシュド」では表記としてどちらが適切なのか、という話なんですけど。わかりにくければ、「ジョージ・ワシントン」なのか「ジョージ=ワシントン」なのか、でも結構です。現在の僕の立場は「・」は並列の記号と考えて、たとえば「ソクラテスプラトンアリストテレス」というふうに使い、苗字と名前を繋げたりする場合は後者の「=」を使ってるんですけど、ただ「=」はイコールの意味でもありますから、まったく問題なく、というわけにはいかないのです。そういえば並列に関しては「/」も利用可能の範疇にあると思いますが、「ソクラテス/プラトン/アリストテレス」と書いてみたときに、どうも、三者が別々の部屋にいるような感覚、隔絶感があってあまり「似通った要素をもつものの集合」というニュアンスを出すには適さない気がします。「・」で区切った場合は「ソクラテスプラトンアリストテレス」あるいは「ソクラテスプラトンアリストテレス」なのですが、「/」だと「ソクラテスまたはプラトンまたはアリストテレス」という感じがします。あくまで感じなので個人差がありそうですが。かといって「、」で代用するのは避けたいんだよなあ。これは文と文を区切るのに使いたい。とまあこのように考えてみた結果、「ジョージ=ワシントン」を「ジョージはワシントンに等しい」と読む人はあまりいない筈だろう……とある程度見限るしかないかなあ、と。
 あともう一つ曲者なのが「カント・ラプラスの星雲説」のたぐいなんですが、この表記の問題点は「“カント”と“ラプラスの星雲説”」と読まれてしまう余地があることです。かといって「カント=ラプラスの星雲説」と書くと「カント=ラプラス」という人がいるように思えてしまうし、どうしようかな。まあでも文脈で分かるよね……。ということで並列性を尊重して前者かなあ。こだわるなら「(カント・ラプラス)の星雲説」なんて表記も可能かもだがうーん。
 また、似たようなものに「ドラえも〜ん」というように「〜」記号を音を伸ばす用途、「ー」の代わりに使ってもいいのか、つまり「〜」は「1〜30の中から好きな数字を選んでください」というふうに from A to B の役目を果たすわけですが……という問題なんかもあります。まあこれに関しては気になるならば「ー」だけ使っとけばいいわけだが、「〜」のもつ、弱々しい、軟派な、ゆるい感じは結構、魅力的でね。さすがに誤解の危険性はかなり低そうなので、僕もたまに使っています。