参考書1冊

 昨日。疲れてもいず、さりとて腰据えて勉強するほどの余裕のない空白の時間を埋めるべく、細切れに役立ちそうな一問一答を。ところでその当日に日記を書いたので、掲載しとく。プライベート気味、というか小説を書くのと近い感覚で書いたので、ここの文章とは多少手触りが違っている。それから、長め。

一問一答世界史B用語問題集

一問一答世界史B用語問題集

■2008/9/24 の日記
 必要になったので、参考書を買いに朝の10時から近所の書店に足を運ぶ。こんな時間から本屋に行くなんて、まさしくニートのなす業だな、と思いながら。――もちろん、これは考慮済みのこと。水曜日の朝から本屋に出向くのは意図していなかったにしても、ニート的なふるまいをして劣等感を覚える、という経験をする目的も含めていたのだ。それにしても、浪人生、特に怠惰な自宅浪人としての網膜から見る労働者は、いかにもつらい。なに遊びに行くのじゃなし、後ろめたいことをしているのでもないが、ただただ自宅浪人という身分が劣等感を運んでくる。
 自宅浪人=ニート
 そういうことだ。ともあれ、坂の下の、別の大型雑貨店の駐輪場に自転車を収め、そこから歩き出す。こんな時間、人通りのない静かな路上を期待していたのだが、意外と近い年齢の人間も歩いているものだな。信号が青になり、また歩き出す。坂の上に向かって、ゆっくり歩く人を追い越しながら、――これは……せわしく動いてみることで後ろめたさをごまかしているのだろうな。――しばらくすると、駅と一体になった大型集合商店(?)とでもいうような建物の前にあたり、高校生か大学生とおぼしき男の二人組とすれ違い、階段を上ってガラス戸を引いて入る。右手は音楽関係の店で、その前のベンチに座る小学生ほどの二人組は各々PSPで遊んでいる。思ったより人が多いことに不審を覚えながらも、エスカレーターを上がって目的の書店に着いた。いつものように奥の参考書コーナーに直進し、しかし折角来たのだから……と買う予定のない参考書の吟味をはじめてしまう。一通り済ませて今日買おうと思って来た書籍がある棚の前まで移動し、物色しはじめる。
 ――ふむ、山川の一問一答は2種類出てるとあったが、確かに。これは見たことのない本だが、表紙が好みだな、どれ、中身は……みな同じようなものだな。どれ買ってもいいわけで、すると一番気に入ったのを選べばいいな。あれ、隣に小太りの男が、世界史の教科書かなにかを手にとって調べている。こんな時刻でもいるものだな。ともかく、もう片方の本を見よう。平積みになっているこれは恐らく山川の一問一答では最も(といえども2種類しかないが)有名なのではないか。俺もたぶんこれを選ぶだろう。8割がた決まっているが、一応中身をチェック。ふむ。これでいいだろう。スッキリまとまっていて丁度いい。しかしさっき見たほうと何が違うのだろうか。棚から取り出し、開く。目次を見る。独特のまとめ方をしているな。しかし古代ギリシャなどをカバーしていないのはよくない。続いてまえがきを見る。あっ。そうかこれ世界史Aの一問一答だったのか。道理で範囲が偏ってるわけだ。すると山川の一問一答が2種類あるとは受験者人口比率から考えて、世界史Bの一問一答が2種類存在する、つまりここにもう一冊存在するのではないか、と下を見れば先程の隣に確かに平積みにされている一問一答がもう一冊。これはあまり表紙のデザインが好きではないな。編者が違うようだ。一応内容も見とくと、ふむ大して変わりはないようだし、設問も似たようなものか。しかし局所局所でまとめの問題があるな。知識を確認するだけだからこれは不要だろう。やっぱりさっき見たやつにしよう。
 あらかじめ財布を出し、値段を確認しながらレジまで持っていく。文庫本を立ち読みするサラリーマンとおぼしき年齢と服装の男を横目に、購入。うまい具合に小銭を持ち合わせていなかったので、千円札だけ出す。店員に五千円札と誤認されてしまい、あわてて訂正。あやうく得するところだったぜ。とにかく目的を果たしたのでエスカレーターを下だり、階段を下りて店を出、坂を降りる。そろそろ陽が照ってきた。途中、後ろから見てかわいい服装だな、年齢的にはおばさんかな、と思った人を追い越し、しばし歩いてから信号を渡る。と、ある家の塀に素敵な地図を見つけ、写真撮りたいなあと思うが、そのまま素通りしてしまい、しかしやはり撮ろうという気になり、Uターン。さきほどのかわいい服装の「おばさん」と正面から見合う形になり、彼女が実は「おばあさん」であったことが判明する。ともかく携帯のカメラで先の地図を控え目に撮影し、ふたたび駐輪場へ。自転車に乗り、家路。家の向いのマンションでは工事をしていて、ときおり足場を渡る労働者が窓から見える。なんとなく後ろめたくて、僕は一瞬硬直し、隠れるように隣の部屋へ入る。これは自宅浪人という甘えた身分ゆえだと自覚しているけれど、たとえ予備校に通う浪人生でも、大学生になっても、サラリーマンであっても感じてしまうものなのかな、という気もする。