『ボッコちゃん』星新一

ボッコちゃん (新潮文庫)

ボッコちゃん (新潮文庫)

 僕が本を読むようになったのが2年くらい前なんですが、そのころ、つまり本に触れはじめた頃にこれを読んだんだった。それからも星新一の本は数冊読んだんですが、なんかだんだん惰性で読んでいるのがミエミエになってしまって、しばらく控えることにしてた。で、それからそれなりに読書経験を増やしてきたことだし、最近になって「そろそろいいかな」と思い、再読にいたる。そしたらこれだ。面白いです星新一。あっ。しまった「面白い」って言ったらあとに続ける言葉がなくなっちゃったよ。最終的な結論なのに。
 ちょっと余談ですが僕には「星新一はSFではない」と言っていた時期があって、まあその内訳はショートショートにありSFにあらず、みたいな、寓話みたいのとか色々あるんじゃないの、的な浅薄なアレであったんですけど、今回読んでみて星新一はSFだと確信した。なんだ、明らかにSFじゃないか。もちろん宇宙船が出てきたり未来が描かれたりするところではなく、肩に載せた機械の鳥に代わりに喋らせてみたりとか(コミュニケーションの問題)、便利すぎる社会の弊害とか、あと人間の醜い……というか、価値判断はおいて「これが人間ですよ」というスタンスで語られている……姿とか。それらが淡々とショートショートに載せられている。