『李陵・山月記』中島敦

李陵・山月記 (新潮文庫)

李陵・山月記 (新潮文庫)

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ただ知らない熟語が多いゆえに註釈読んだり辞書引いたりの間に話への集中が途切れたり時間の過ぎ方が気になりはじめたりする弊害はありました。これに対する策はひたすら「語彙を増やす」しかなさそうです。そういう弊害はありました。ありましたが、それを差し引いて思うならば。
まあなんか国語の授業で『山月記』をやって印象深かったってアレなのですが。中島敦の文章は格好良いですねえ。「格好良い」なんて言うと格好良くないか。かと言って「格調高い」なんて言うと気恥ずかしい。いや、こっちの話。とにかく何か文章に迫るものを感じさせます。悉く中国の古典に取材した作品であるわけですが原典の淡白さに比べて内面的な苦悩などといったものが加味されています。って。自分の表現のあまりの客観的さ加減に嘆きを加えたい限りですが。加味、とか言っている場合ではなくて、苦悩は苦悩でしかない。読者はその苦悩を想像して疑似体験するしかない。そうじゃないの。『李陵』の司馬遷の話が印象的でした。